とけない呪いがある

 

 とけない呪いがある。

たとえば、「育て方間違えた」、たとえば、「あんたにはなにもない」、たとえば、「もう話しかけないで」。

 

数えきれないくらいの呪いがある。でも私はそれを毎日ひとつひとつ数える。丁寧に数える。数えたくなくとも、頭の中に響く。それは唐突に。布団に入った瞬間、駅から家まで歩いているとき、お皿を洗うとき、友達と電話して笑ったあと、いつでも、頭の中に呪いがリフレインして私はもう二度と笑ってはいけないのに、と思う。でも世の中の人間は笑わない人間を罪人みたいにするから、無理やり笑ったりもする。呪いはいつでもやってくる。増えることはあるけれど減ることはないから、毎日数えると少しずつ少しずつ増えていく。でもそれを飲み込めないのは私のせいで、きっと世の中の人はそれを飲み込みながら笑ってるから、笑えない私は駄目な人間で、だから呪いも増えていくんだろう。わかっていても呪いはやってくる。

私は呪いにいつもこう答える。そうだね、その通りだねごめんなさいって。私はいつも自分を許せないでいる。けれど現実でやってることは正反対で、許しすぎているように見えるだろう。同じように苦しい人でもまともに生活できている人はいるから、だから私はまた呪いが増えていくんだろう。

これはほんと呪いじゃない。自業自得だから。自業自得だから、とけるのは私しかいなくて、でも私は産業廃棄物のような個体だから、いつまで経ってもそれを呪いにして、とかずに、言い訳に使っている。

呪いをとかない私をみんなが許さないのは当たり前だ。