鈍痛


鬱だったころ、いつも心臓が痛かった。
ナイフで刺されたみたいに、さながら血が流れてるみたいに痛くて泣いていた。
あのころはよく神聖かまってちゃんを聴いていた。というより、聴ける音楽はかまってちゃんくらいなものだった。他の音楽を身体が拒絶してる感じがしていて。
触れている人間の言葉が鋭くて、一人で歩く帰り道は反芻しながら泣いていた。私はどこまでも社会にうまく適合できない。他人が苦手だ。

なんとなく、少しずつ、苦手なものをうまく回避する方法を身につけて、心を麻痺させる術も覚えていった。今はもう病院にも薬にも頼らないし、人に当たり散らすことも少ない。
そうやって健康な生活を手に入れて、それで空っぽのままの日々だ。
ちょうど、卒業と新型コロナの流行がかぶって、みんながいろんな経験や機会を失って、それを言い訳に社会から少し離れた場所にいた。
毎日同じ日々だから、卒業してから時間が経っているのがよくわからない。自分だけまだ学生でいるような感覚が続いてる。夢のなかにいるみたいな感覚が続いてる。
自分だけずっと立ち止まって彷徨っている。
でもいろんな感覚や感情を鈍らせてあるからあまりつらくはない。鈍い痛みがずっとある。
どこからくるかもわからない、どこが痛いのかもわからないようななんとなく鈍い痛み。
あのころ聴いてた音楽を今聴いてもなんにも感じない気がする。歌詞全部覚えてるのかなぁ。
あのころのほうが泣いていたのに、今はあのころが恋しいんだ。


エンドレスダンス

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